生成AI活用で進む、人材のジェネラリスト化。ビジネスパーソンはどう差別化すべきか

INTERVIEW 007
CHISATO KUNIMOTO
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生成AIの台頭は、ビジネスパーソンのキャリアやスキル拡張にどのような影響を及ぼすのか。生成AI領域のコンサルティングサービスやリスキリング・教育研修を提供しているCynthialy株式会社 代表取締役の國本 知里氏にお話を伺いました。國本氏は、生成AIと個人のスキル拡張の関連性について、「今までスキルを身につけるために年単位の時間をかけていたところが、生成AIを活用すればたった1日でプロ級の成果を得られる」と語ります。生成AIによる個人のスキル拡張の可能性や、市場価値が高まる人材のあり方、ビジネスパーソンの差別化ポイントなど、幅広く解説いただきます。

革命的なのは「誰でも簡単に使えること」。第3次AIブームからの発達

ー國本さんがAIに関心を持ったきっかけを教えてください。

5、6年前は第3次AIブームの時期で、特に画像生成の精度が大きく向上したタイミングでもあり、AIが注目されていました。そのとき、AIは社会を変革する技術だと確信し、その活用方法が極めて重要だと考えたんです。そんな考えがあってAI事業を展開するスタートアップに参画し、大手企業向けの推進方法などを考え、業務を遂行してきました。

その後、2022年に登場した「Stable Diffusion」や「Midjourney」といった画像生成の技術、「ChatGPT」をはじめとする自然言語の技術は、非常に発達してきたと感じています。これらの技術は、精度の高さだけでなく、ユーザーが誰でも簡単に使うことができる点で、とても革命的だといえると思います。

たった1日でプロ級になれる? 生成AI活用で進む、人材のジェネラリスト化

ー誰でも生成AIが使えるようになったことで、個人のスキル拡張の側面では、どのような期待が持てるでしょうか?

今までは何かスキルを身につけようと思ったら、年単位の時間をかけて学ぶのが一般的でした。特に職人と言われるような職種では、10年以上の年月を要することも珍しくありません。しかし、今は生成AIを活用することで、たった1日でプロ級の成果を得ることが可能になってきています。これにより、これまで特定のスキルを持っていなかった人でも、短期間でデザイナーや作家、ライター、動画編集者、エンジニアなど多様な職種のスキルを習得できるようになってきました。これまでは特定の専門性を追求する時代でしたが、今は個人が様々なスキルを身につけることがカギとなっています。

ーそうなると、企業から見た採用の側面にも変化がありそうですね。

企業側から見ると、特定の役割を持ったエンジニアや専門家ごとにタスクを分けて依頼していたところが、1人の人材でデザインやコーディング、マーケティングやライティングといった多様なタスクを依頼できるようになるわけです。これを担える人材は市場での価値が格段に上がります。ある意味、人材のジェネラリスト化が進んでいるといえるでしょう。多才な人材が増えることにより、日本経済にもたらす価値も高まると思います。

ビジネスパーソンの差別化ポイントは「人間力」と「付加価値の向上」

ー生成AIを活用した、人材のジェネラリスト化について詳しく教えてください。

まず、専門性をどんどん高めていく手段の一つとして、ChatGPTのような技術が有効です。ChatGPTを利用し、ライティングやエンジニアリング、データ分析といった専門性をさらに強化し、それを他のスキルや知識と掛け合わせることで、より強固な専門家になることが可能です。例えば、AIの知識があり、製造業界にも詳しく、さらにセールススキルも持っているような人材は、非常に稀有です。少なくとも3つの組み合わせで専門性を高めることは、今後のキャリアで非常に重要となるでしょう。そして、そのような多角的な専門性が社会に普及することで、各分野の普遍的な価値を高めることができると考えます。

ー習得のハードルが下がる一方ではスキルの普遍化も進むわけですが、今後ビジネスパーソンはどのような差別化を図っていく必要があるのでしょうか?

人間力が大事になっていくと思います。スピード対応や、AIにはできない微細な気配りができる、相手の期待値を超えていくなどが差別化の要因として大きくなるでしょう。また、継続的な学習を通じて、クライアントに対する付加価値を高めていくことも大切です。生成AIの誕生によって、世の中のあらゆる定義も変わってきています。そうなると、クライアントの業界理解も改めて行う必要がありますよね。

新しく学ぶことは大変ではありますが、ChatGPTなど生成AIを活用することで、クライアントの業界の情報をすぐにキャッチアップし、思考を広げていくことも可能です。思考を広げることは、クライアントと同じ目線に近づき、仕事が進められるようになることにつながります。より質の高い提案やインサイトを提供できることが、今後求められるビジネスパーソンになるための鍵であると思っています。

PROFILE

CHISATO KUNIMOTO

一般社団法人生成AI活用普及協会 協議員/Cynthialy株式会社 代表取締役
大学院卒業後、SAPにてHR SaaS法人営業を経験後、AIスタートアップでの事業開発マネージャーとして、大企業向けAIビジネス新規事業・営業・マーケに従事。その後、DX・AIスタートアップの支援会社を創業、マーケティング・PR立ち上げ・DXハイクラスエージェントを立ち上げ。2022年10月にCynthialy創業し、生成AI活用人材の育成事業を推進。情報経営イノベーション専門職大学 客員教授。