【医療×生成AI】少子高齢化・未病先進国の日本で進む、メンタルヘルス最前線
INTERVIEW 018
HIROMI KAWAMATA

生成AIの台頭で「医療×AI」の可能性は広がるのか。AIを活用して瞳孔から「痛みをはじめとする様々なコンディション」を計測し、可視化するシステム「AiLive(アイリヴ)」を提供する株式会社AIMS代表取締役の川又 尋美氏にお話を伺いました。少子高齢化や未病先進国といった課題を日本が抱える中、「生成AIは実現したい未来を手にする翼」だと川又氏は語ります。少しでも長く健康でいられる世界をつくるために、AIを活用したメンタルヘルスへのアプローチについて探ります。

SECTION 001

原点は父の死。AIを用いた「痛み」の可視化に込められた想い

ー川又さんも手掛けられている「医療×AI」の領域は非常に注目を集めています。起業の原点について教えていただけますか?

2011年3月11日、未曾有の大災害が東日本を襲いました。東日本大震災が起こった年に、実の父が急性期の肺がんで亡くなりました。毎年きちんと健康診断を受けていたのにも関わらず、がんになるまで気がつくことができませんでした。看護婦の母は「なぜ気づけなかったのか」と後悔の念に駆られていました。このことをきっかけに、生きている間に、取得したバイタルデータが活かされていないという社会課題に気づいたんです。人の健康状態を可視化し活用することができたら、身近な人の心身の痛みを解放してあげられるかもしれない。そう考えて起業し、瞳孔から「痛み」を計測し、可視化するツールとして世界初のAI連携電子瞳孔計を開発したのです。

ー「痛み」の可視化について詳しく教えてください。

「痛み」というのは極めて主観的な知覚です。例えば歯科医で治療を受けるとき、「痛かったら手を挙げてください」と言われることがありますよね。しかし、あくまでそれは個人の感覚指標です。メンタルが強靭なプロアスリート選手の場合だと、本来身体的な痛みがあるにも関わらず、痛みとして認識しないようなケースもあります。痛みの測定は、こういった主観的な痛みを客観的に10段階などで表すペインスケールが主流ですが、可視化が極めて難しい領域でした。

これに対して私たちは、身体に感じる痛みの強さを瞳孔から計測して可視化するシステム「AiLive(アイリヴ)」を開発しました。痛みの可視化は、測定した瞳孔の拡縮運動の波形データをAIが解析することで行います。痛みによって自律神経の「交感神経」と「副交感神経」が交互に動く中で、AIはスパイクと呼ばれる鋭くとがった特有の波形を解析し、痛みを特定します。

計測には「AiLive電子瞳孔計」というVRゴーグルのようなデバイスを用います。目の前に装着することで瞳孔の動きを計測し、データから自律神経のバランスやストレス度合い、神経年齢を可視化し、自分のコンディションを把握することで、怪我やコンディション悪化を防ぐこともできます。

SECTION 002

生成AIで広がる「医療×AI」の可能性

ー医療分野でのAI活用が進むことによって、どのような価値が期待できるのでしょうか?

医療格差を解決できることが一番の価値だと考えています。今後の急速な少子高齢化によって、医師が不足している地域の人材不足はますます加速し、地域格差や時間格差がさらに拡大していくでしょう。特に地方においては深刻な課題です。

例えば、認知症の初期段階はMRIを利用しないと診断ができません。医療リソースが不足する地域では、MRIを受けに行くための時間や負荷が極めて大きくなっています。しかしWi-Fi でインターネットとつながる電子瞳孔計を使えば、ユーザーが自宅などで測定することで、AIが分析してメンタルヘルスを可視化し、解決策を提案してくれます。医師による診断の必要性もAIが判断してくれるので、移動の負荷も軽減できるでしょう。

ー生成AIの台頭によって、「医療×AI」の可能性は広がっていくのでしょうか?

生成AIには可能性を感じています。例えば、これまでAmazonをはじめとするECでの購買体験は、インターネット上での検索などの行動データに基づいて、AIが趣味や志向を分析し、リコメンドされ、人が意思決定するものでした。しかしこれからは、一人ひとりのバイタルデータから、AIがその人の状態を判断し、必要なものを必要なタイミングで届けてくれるような体験が実現できると考えています。病気と診断される前の未病の段階で、AIによってその人に必要なものが提供されウェルビーイングにつながる。ヘルスケアの段階、未病の段階、病気の段階を縦軸につなげ、少しでも長く健康でいられる世界を作っていきたいですね。

SECTION 003

「未病先進国」の日本から世界へ。AIで解決を目指すメンタルヘルスの課題

ー医療分野において、これからの人とAIの役割をどのようにお考えですか?

医師1人あたりが患者1人を診断できる時間は約3分間だと言われています。患者は長時間待ったあと、あっと言う間に診察が終わってしまう。多忙な医師が1人ひとりに投下できる時間は限られているわけです。だからこそ、人ではなくてもできる仕事は極力AIで行うことが、これからの時代に求められることだと思います。

うつ病などのメンタル疾患の対応にも多くの課題があります。診察を受けようにもクリニックの電話がつながらない。医師が多忙で予約が取れても1ヵ月先。診察を受けられるまでの間に、軽度のうつが悪化して朝起き上がることすら難しくなる。このような状況により、出社ができなくなる人が毎年増えています。メンタル疾患の重症化は、その後の人生にも関わります。

こうしたケースにもAIを活用し、医師が関与するポイントの線引きができれば、救われる人たちが増えると思います。社会システム全体を変えていくことができれば、1人の患者さんに投下できる医師の時間が増え、必要な人に医療を届けられるのではないでしょうか。

ー社会システムを変える、ということを原点である福島の地で実践されていますね。

東日本大震災の後、福島県の人たちは長期にわたる健康被害の元にあります。PTSD(心的外傷後ストレス障害)や人間関係の希薄化、経済的な不安により多くの人が未だに苦しみ、未病の状態にいます。こうした状況は今後10年、20年と続く社会的な課題です。このメンタルヘルスの課題解決に向けて、福島県田村市とともに取り組みを進めています。

福島県で起きている未病の課題は、少子高齢化が進む日本全体でも起こりうることだと考えています。ある意味、世界的にみると日本は「未病先進国」だといえるでしょう。福島県で成功モデルを創出し、日本の課題解決を進めることが、世界中に希望を届けることにもつながると確信しています。私にとって生成AIとは「実現したい未来を手にする翼です」。AIを活用した未病へのアプローチを、世界へと広げていきたいと考えています。

PROFILE
HIROMI KAWAMATA

一般社団法人生成AI活用普及協会 協議員/株式会社AIMS 代表取締役
20代で幼児2人を連れ渡米、日米中台と多国籍企業を経営しシリコンバレーのスタートアップと密接に関わる。帰国後、AIビジネスを立ち上げることに。20代前半、在宅勤務の主婦を中心とした革新的な広告代理店Lindoors株式会社を設立。Dell国際女性実業家会議日本代表。Google Japan女性就業支援のアドバイザー(G-carrer)や日本最大級の生活週刊誌編集統括を歴任。ソフトバンクアカデミアAI実業家群13期生。

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