新規事業開発の要諦。生成AIによって変わること・変わらないこと

INTERVIEW 005
SHIN OGURI
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新規事業開発において、生成AIをどのように使いこなしていくべきなのか。株式会社NTTドコモでAIを活用した数多くの事業を立ち上げてきた新規事業プロデューサー 小栗 伸氏にお話を伺いました。小栗氏はAI活用のハードルが下がったことで、新規事業開発の側面においても「生成AIをうまく使えるかどうかで、新規事業のアイデアの発案や磨き込みのスピードが大きく変わってくる」と語ります。生成AIの活用を前提とした新規事業開発の要諦や、人が変わらずに担う役割について探ります。

自然言語で扱えることが生成AIの最大のすごさ。新規事業開発にも大きな変化

ー小栗さんから見て、生成AIの機能面で最もすごいと思う点はなんでしょうか?

自然言語で指示が出せるというところが、最も大きなインパクトのあるポイントだと思います。これによりAIが、コードを書ける人だけの独占的な領域から、より多くの人々に開かれたものになったと感じています。AI活用のハードルが下がったことにより、新規事業開発の側面においても非常に大きな変化があると思っています。

ー具体的にはどのような変化が考えられますか?

2つあると思っています。1つ目は、生成AIをうまく使えるかどうかで、新規事業のアイデア発案や磨き込みのスピードが大きく変わってくること。従来の方法だけで新規事業にチャレンジしていると、ライバルに先を越されるリスクが高まると思っています。

2つ目は、新規事業を通じた課題解決の選択肢が広がったこと。新規事業のポイントは、見つけた課題に対してどうアプローチしていくか、ということなわけです。生成AIは優れた機能を有するため、今まで解決が難しかった課題を解決する手段としても活用できます。生成AIの存在を前提として課題を捉え、様々な解決方法を探索し、それを実現する能力を持つことが、新事業の成功確率を大きく左右すると考えています。生成AIはある意味、新規事業開発のパートナーだといえます。

人間の重要な役割は「決めること」。生成AI時代でも変わらないこともある

ー生成AIの活用を前提とした際、人間としての重要な役割は何だと思いますか?

「決めること」だと思います。新規事業のアイデアに関しては、生成AIの力によって、今までよりも圧倒的な量を、ものすごいスピードで発案することができるようになりました。しかし、結局のところ、新規事業はアイデアの中で何を選んで実行するかがすごく大事なんです。生成AIが高い確率で成功するアイデアを導き出し、決めてくれる時代が来るかもしれませんが、今は「決めること」が変わらない人間の役割として非常に重要だと思っています。

ー新規事業開発に生成AIを使うことへのリスクについては、どう考えていますか?

新規事業は、これまでにないサービスを提供するものなので、常にリスクを伴います。その点において、生成AIを取り入れたとしても、大枠は変わらないと思っています。

リスクを捉えるときに重要なポイントは、お客さまが感じる価値とリスクのトレードオフです。つまり、価値が大きければ、取るべきリスクだと考えることもできます。最初はリスクを最小限に押さえ、実績を積み上げること。その実績に基づいて、リスクを許容できなかった方々が取り組んでくれるようなアプローチが求められるでしょう。これは今までもそうですし、生成AIを活用する際も同様のアプローチが必要だと考えています。

キャッチアップと行動。生成AI×新規事業開発で大切な2つのポイント

ー最後に、生成AIを活用して新規事業に取り組もうと思っているビジネスパーソンにアドバイスをお願いします。

2つあります。1つ目は急速に進化している生成AI技術のトレンドを適切にキャッチアップして抽象化し、自身の知識としてストックしておくこと。2つ目は、新しく出てきた技術が、世の中にある課題とどう結びつくのかを考え、行動することです。

技術の進化が早い今の時代において、同じビジネスアイデアを持つ人はたくさんいます。その人たちの中から、タイミングよく一歩先を進むためには、技術の情報をキャッチアップして、自身の中に抽象化し、動いていけるかが重要です。これらを意識すると、ビジネスチャンスを掴み、形にできるのではないかと思っています。

PROFILE

SHIN OGURI

一般社団法人生成AI活用普及協会 協議員/株式会社NTTドコモ 新規事業プロデューサー
NTTドコモにて、国内初の音声対話サービス「しゃべってコンシェル」をはじめとした12のAIプロジェクトを製品化・事業化。2023年からNTTDigitalにてWeb3事業創出に携わる傍ら、株式会社AI Boosterを設立し、生成AIの導入支援・プロダクト開発も行う。世界で最も権威あるIFデザインアワードGoldをはじめ、18件の賞を受賞。経産省「始動Next Innovator」採択。